この世界に不満をお持ちのあなたへ捧ぐ!「最後の喫煙者」を読んでみた。
こんにちは!りょっぴです。
筒井康隆の小説「最後の喫煙者」を読みました。
最近、この作家さんの小説にどハマり。
立て続けに本を読んではレビューを書いています。
今回も「最後の喫煙者」を読んだ感想を書いていきます!
筒井氏はぶっ飛んでいる。
本書は9話の作品が収録されている。
ありえない設定の話で「は?何言ってんのや」と感じる作品ばかりだ。
「笑うな」と同様にもう話の設定がぶっ飛んでいる。
だからこそ面白くて読むのをやめられない。
関連記事:絶対に笑ってはいけない?筒井康隆の「笑うな」を読んでみた【書評・レビュー】 - りょぴろぐ
ぼくらが当たり前だと思っているこの世界を違う角度から見つめなおし、
忘れてしまった価値観を見直すことができる。
ぜひ1度手にとって読んでもらいたい。
好きな作品を紹介
各話のあらすじを紹介しようと思ったのですが、
短い作品のため説明するまでもないと感じ、特に面白かった作品を厳選して紹介。
「急流」時間の流れが速くなった世界(P.7)
なんとなく時間が早く過ぎていくことに気づいて、
世の中の仕組みが次々と狂い出す様子を描いた作品。
不可解なことではあるが時間を左右しようとして人間が作ったその時計なるもの及び時計を応用したあらゆる機械が人間に反逆し時間に味方したとしか思えぬ現象だった。(P.8)
時間の加速現象によって社会のあらゆる場面で異変が起こる。
そんな様子を筒井氏がおもしろく表現していく。
なかでもぼくがとくに好きな表現を引用します。
電車がプラットホームに入ってきてからベンチを立ってももう遅い。ドアが開いている間に車内へとびこもうとして駆け出したりすれば、発車したあとの線路上へころげ落ちることになる。( P.12)
「時間に縛られるな!」系の自己啓発本をよく見かけるがまさにこのこと。
時間という概念を作り出した人間が時間に縛られていく様子はなんとも皮肉だ。
きっと筒井氏は「人間は自分たちが作り出したものに苦しめられるアホな状況に置かれている」というのを時間をピックアップして伝えたかったのではないか。
「問題外科」人殺しを楽しむ医者(P.29)
まだ若い2人の医者が手違いで健康な女性を手術してしまう話。
こういうニュースよく聞きますね。
2人の医者はこの手違いを外科部長に報告する。
「手違いがありまして、どこも悪いところのない産科の看護婦の腹を裂いてしまいました。今まで、その処置をしていたところです」(P.54)
この報告に対する外科部長の反応がぶっ飛んでいる。
まだ生きておるということを早く言わんか。そういう面白いことがあるのなら、ぜひわたしも立ちあいたい。さっそくそこへ行こうではないか。案内しなさい」(P.55)
この反応は馬鹿げてますよね。そこは怒れよって(笑)
このあとのオペがグロすぎて紹介しきれません。エロくてグロい強烈な作品となっています。
ぜひご自身の目で確かめてください。
「こぶ天才」こぶをつけてないと天才になれない(P.109)
こぶを背中につけると天才になることができる。
どうやってこぶをつけるかというと、虫を背中に寄生させるのだ。
その虫の名前が「ランプティ・バンプティ」
あれ?どっかで聞いたことのある名前。
そうです!こいつです(笑)
ハンプティダンプティですよ!
こんなこぶが背中に引っ付くと思うとおもしろいですね。
この話は最後のオチがくだらなすぎて笑えてくる。
(恥ずかしながらオチを理解できず、ググりました。)
一応、ネタバレギリギリで説明しておきますと、
「ノートルダム寺院」というのは「ノートルダム・ド・パリ」というヴィクトル・ユーゴーの小説で邦題は「ノートルダムのせむし男」らしいです。
一応、文字を薄くしておきました(逆に目立っちゃったかな?)
ネタバレを知らずに読みたい方はすっ飛ばして読んでください!
「平行世界」上と下の世界からくるおれ(P.203)
玄関のチャイムが鳴ったので、出て見るとおれが立っていた。「やあ」と、おれはいった。「おれ、上から来たんだがね」と、そのおれは、おれに言った。おれと同じ服装をし、おれ同様の無精髭を生やしている。(P.204)
上や下の世界からおれが訪れてくる、
いわゆるパラレルワールド(平行世界)を描いた作品。
パラレルワールドの物語って主人公がいろんな世界へ行って、
もうひとりの自分にアドバイスしたり、人生をやり直したりするのだけれど、
この作品のおれはとくに何もしない。
たんたんと物語が進んでいくからこそ、じわじわとおもしろさが伝わってくる。
感想
短編小説である「最後の喫煙者」よりはショートショートの「笑うな」の方が
おもしろいお話が多かったかな…
1冊目に筒井康隆の短い作品を読みたい方は
「笑うな」から読むのをおすすめします!
まとめ
最後の大岡玲氏の解説「センス以前への飛翔」で
「なるほどな」と感心させられた表現がいくつかあったので引用します。
緻密に計算されているのに、暴走している。(P.277)
まさにこの通りだと感じました。
内容は暴走しているように思えるけれど、
どこか計算され緻密に練られた意図があるように思えてならないのです。
筒井ワールドにとって重要なのは、風刺だけではない。むしろ、現実世界のグロテスクなカリカチュアは、物語を発進させるための発射台であったり、あるいはナンセンスが暴走した結果、副産物として出現するケースの方が多いのだ。(P.280)
そして筒井氏がナンセンスによって獲得しようとしているのは、
人間の宿命、人間を人間たらしめている根本である言語を、どこまで酷使できるかというデータなのだ。言語という素材によってしか表現できない想像力の、その限界値を獲得しようと試みているのではないか。(P.280)
ということです。(人に頼りっきりのまとめですね、、、)
そして、言語をどこまで酷使できるか実験している小説が「残像に口紅を』ではないでしょうか?
関連記事:【書評・感想】世界から文字が消えていく...「残像に口紅を」を読んでみた。 - りょぴろぐ
ぼくもこんな風に書評を書けたらいいなと思います。
もっともっと本を読んでレビューを書いて、上手く書評を書けるよう頑張ります!
そんじゃ!Goodbye!!!