CREART

マルチスキルとクリエイティブをテーマに情報発信をするメディア

「わからない」から卒業するための、現代アートの鑑賞術

現代アートに興味をもったあなたに、現代アートの2つの鑑賞方法を紹介します。

ぼく自身、ピカソをはじめとするアートの作品には以前から興味をもっていましたが、なかなかアートの世界に入っていくことはありませんでした。つい最近、村上隆さんの「芸術起業論」を読んで、そこから現代アートの楽しみ方をぼくなりに考えました。

そしてやっと最近、現代アートの鑑賞方法には2つあって、それぞれの楽しみ方があるという結論に至ったのです。現代アートビギナーだったわたしの、「現代アート鑑賞法」を参考に楽しいアートライフへと踏み出しましょう。

現代アートの鑑賞術

美術館に行って作品を鑑賞するときに、どんなことを思い浮かべますか?「あ、なんかこの絵好き」「綺麗な絵だな」など、なんとなく感覚的に思い浮かべている感想があると思います。そうした、自分自身の感性と照らし合わせて鑑賞する方法が、まず一つ目の「感覚的鑑賞」。

また、逆に「この絵意味がわからない、なんでこんなに評価されているの」といった、マイナスな感想を抱くこともあるでしょう。その感想は間違っていませんが、ただ注意してもらいたいことがあって、「知識があることで楽しめる作品も存在する」ということです。

知識というのは、作品をつくった作家や、その作品のモチーフとされているもの、作品がつくられた時代背景などのこと。これらの予備知識をふまえて改めて作品を鑑賞してみると、最初に感じた「つまらない」という感想が、「たのしい」「すごい」といったプラスな感想へと変わっていくのです。知識をもとに作品と向かいあう鑑賞方法が二つ目で、「理論的鑑賞」。

理論的鑑賞についてもう少し説明が必要そうですね。

例えば、誰もが知っているピカソ。彼のどこが評価されているのでしょう。
絵が上手いから?感覚的に訴えてくるものがあるから?いいえ、違います。ピカソは、それまでの芸術のあり方を大きく変えたのです。

かれの代表作のひとつに、「アヴィニョンの娘たち」という絵があります。五人の女性が描かれていますが、決して美人とは言えない描写がなされています。ピカソがこの絵を描くまでは、女性を美しく、ありのままに描くことが、芸術において評価される基準でした。また、正面の二人はまだ人間の様相を捉えることができますが、ほかの三人、とくに右下に描かれる女性は、顔のパーツがバラバラに描かれています。

この絵が革命的な絵であるのは、複数の視点から対象を捉えている点です。それまでは、特定の視点で描かれていました。作家の見た対象をそのままに描くのが一般的であった。

しかしこの絵では、右から見た表情、左から見た表情、正面から見た表情を一つの画面におさめています。複数の視点からものを捉える手法は、のちにキュビズムと呼ばれることになります。このような絵画の見方が理論的な鑑賞法です。

現代アートがわかりづらい原因

現代アートの作品を見ても、いまいち楽しめない原因は「作品とどう接していいかのかわからない」ということ。作品との接し方(鑑賞方法)が2つあることはこれまで述べてきた通りです。では、なぜ2つの鑑賞方法が生まれ、わたしたちのアートとの接し方は複雑なものになってしまったのでしょうか。アートが生まれてから、2つの鑑賞方法が登場するまでの流れをまとめてみます。

アートでは、鑑賞者が存在してはじめて作品となりえます。作品になる基準は、つくられた作品が「鑑賞者を揺さぶりかけるなにか」を持っているかどうかです。最初の鑑賞者は作品を見て、「あっこの絵いいな」と漠然とした感覚を感じとります。この感覚を言語化していく作業が「批評」であり、これまでも多くの批評家たちが作家や作品を批評してきました。つまり、作品が生まれてから鑑賞者が一番はじめに作品と接するのは、感覚的な鑑賞を通してです。

批評が行われていくと、それぞれの作品の知識や情報が集まってきます。そして集まった知識をまとめて、「体系化」していく作業へと移り変わっていきます。それぞれの作品をまとめて、一緒のグループにまとめて名づけていく。すると、アートの歴史が出来上がっていきます。こうして、アート作品が理論化されて、理論的な鑑賞方法が生まれてくるのです。

以降は、新しくつくられた作品はすでに体系化された文脈から価値を判断され、その作品の評価が決まっていきます。また一方で、文脈からの価値判断がなされない作品の中には、感覚的に鑑賞者から評価される作品も出てきます。

このようにして、「感覚的鑑賞」から「理論的鑑賞」が生まれ、現在では2つの鑑賞方法が、現代アートの楽しみ方をより複雑にしています。

「わからない」から卒業して、現代アートを楽しもう!

ぼくはこの二つの鑑賞方法のどちらかが優れていて、もう片方が劣っているという話がしたいわけではなく、それぞれが自由に選択して楽しめば良いと考えます。

例えば、ぼくは感覚的にバスキアの絵が大好きです。好きであることに、理由なんてありません。(ちなみにバスキアの絵は、Zozotownの前澤さんが購入してニュースになったこともあります。)一方で、理論的な目線からアーティストを選ぶとすれば、やはりアンディ・ウォーホルやロイ・リキテンシュタイン、そのほかの多くの作家に注目しています。理論的に鑑賞している時、対象の絵に対する思いは「好き」というよりは「すごい」といったイメージが多いです。

感覚的鑑賞では、自分の感性を大事に「この絵なんか好きだ」という作品を見つけていくよう心がけましょう。そして「なんか」の部分を突き詰めて、具体的になぜこの絵が好きなのかを深めていくと理論を学ぶことにもなるでしょう。人によって、好きな理由を突きとめたい人、純粋に感性を大事にしたい方と別れるでしょう。それでもいいんです。音楽にいろんな楽しみ方があるように、アートにもその人にあった楽しみ方があるんです。

ただ、アートに興味が出てきてもっと知りたくなったときに、知識を増やしていくことなります。音楽のアーティストを好きになり、音楽ジャンルやその他の歌手を調べるように、アートに接していけば良いのです。

音楽に親しむようにアートに親しむ。

アートを敷居の高い、難しい趣味だとは考えずに気軽に楽しみましょう。この記事を読んで、皆さんのアートへの一歩が踏み出せたなら幸いです。